NPO独自取材

2050年を見据えた日本の人口減少対策について

先日の新聞記事に、昨年の日本の合計特殊出生率が2年ぶりに減少したとあった。

厚生労働省のホームページで公開している平成26年の人口動態統計の年間推計では、日本の人口は125.5百万人(平成26年10月1日推計)に対し、出生数は1百万人、死亡数は1.26百万人で、死亡者数が増加しており日本の人口減少は加速している。

2014年の乳児の出生数は100万人。特殊出産率が2005年に今まで最低の1.26から団塊世代2世の出産が増えて増加傾向が続き2013年には1.43まで改善が見られたのに。2014年には微減の1.42となっている。

内閣府の公表する日本の将来人口推移では、このままで行けば日本の人口は2050年には1億人を切って97百万人近くまで減少をする見通しだ。

政府方針では、2050年でも日本の人口を1億人規模に維持をすることを目標としている。そのため、政府は何とか、日本の人口減少を食い止めるため女性の出産を促す各種支援策を打ち出しはしているが、現実には顕著な改善は見られない。

日本の人口推移を示す表。2060年ごろには、8674万人程度に。

日本の人口推移 (総務省 平成24年版 情報通信白書より)

現実の問題として、一つには男性も女性も晩婚化が進んでいる事。二つ目は子供を出産しても仕事と育児を両立させる政府の支援策が企業寄りで、将来に渡り安心して子供を育てる環境が厳しいことにある。教育費も義務教育を受けさせるにも所得格差が広がり、子供を満足に学校へ通わせられない環境にある家庭(特に一人親家庭)が増えている。三つ目は大学などへの高等教育を受けさせるには、年間多額の教育費を必要とし、所得格差が広がる中で高等教育を受けさせる環境が以前に比べて厳しくなっている。

こうした厳しい子育て環境を改善するためには、政府の思い切った子育て支援策が求められる。一般に義務教育を終えて会社に務めようとすると最低限高校卒業程度の学歴を求められることが多い。となれば中学生までの義務教育対象を高校卒業まで延長し、さらに貧困家庭でも、成績優秀な学生に対しては、大学の授業料免除や独立行政法人日本学生支援機構で学費の支援を受けた学生の、学費を卒業後に返済させる義務を免除するなどの教育援助の施策も大胆に取り入れなければ、日本全体の学力が低下してしまう恐れもある。

ヨーロッパでは人口減少に悩む国が多い中で、フランスは日本に比べて出産率が高く、手厚い幼児育成制度の下、人口減少に歯止めがかかった少ない成功例である。それではフランスではどのような幼児育成支援制度を行っているのであろうか。

19世紀に出生率の低下に悩んでいたフランスは、、2008 年のTFR(合計特殊出生率)が2.02になるなど近年は出生率が回復し、移民の流入と相まって人口が増加している。長期にわたり人口の停滞・減少に悩み、様々な少子化対策・家族政策を講じてきた「少子化先進国」フランスの経験は、今まさに人口減少に直面している我が国にとり参考となろう。

参考サイト:リンク

フランスは人口減少を食い止めるため、我が国とは比較にならない充実した家族給付を(2009年ベース)支給している。

  • (1)一般扶養給付の内訳は、①家族手当:20歳未満の児童まで、第2子から支給 ②家族補足手当:3人以上の子を持つ一定所得以下の家族 ③一人親手当:母子家庭ないし父子家庭
  • (2)乳幼児養育給付の内訳は、①出産または養子手当:妊娠7ヶ月目以降もしくは20歳未満の養子を受け入れた月以降に支給 ②基礎手当:出産後の生後ゼロから3歳になる前月 ③就業自由選択補足:子どもが1人の場合=6ヶ月間、子どもが2人以上の場合=3歳になる前月まで
  • (3)保育方法自由選択補足手当、①認定保育ママを雇用するなどの場合
  • (4)特定目的給付は、①特別教育手当:障がいを持つ子供に対し支給 ②看護日額手当:3歳までの子どもの看護休暇取得の所得補償 ③新学期手当:新学期(9月)に6歳から18歳の就学児童を対象に支給 ④家族住宅手当:家族手当を受給している家族

と以上の様に、我が国の子育て支援策と比べても、支援策は乳幼児から20歳までと、非常に手厚く子育てを国策として支援している。

しかし、ここで一つ問題が起きている。近年フランスやスエーデンの様に、多くの移民(多くは中東やアフリカ、東欧など)を受け入れてきた弊害も目立ってきている。近い所ではフランスで起きたフランス新聞社襲撃と無差別テロ、漫画でイスラム教を冒とくしたとして過激思想に感化された中東系フランス人のテロ事件など記憶に新しい。また、スエーデンでは移民による犯罪も増えていると言われる。

以下に、スエーデン在住の横山 渚さんのブログから引用させてもらった、スエーデンの生活についてを一部紹介したい。

《横山 渚さんのブログから引用》

平等社会の陰に潜んでいるもの

高福祉の国、平等社会というイメージが強いスウェーデン。OECD加盟国の中でも国民の所得格差が小さい国ではあるものの、最近では格差の拡大が著しく目立っています。暴動の中心となったグループが、事件が発生した地域の住民であるなしに関わらず、外国人が社会からの疎外感、学業についていけない、職を得られないことによる将来への絶望感を常に抱いていることが、今回改めて浮き彫りになりました。

また、特定の地域から来た外国人への社会から受ける有形無形の差別も、不満の原因となっているようです。社会に対する不満、思うように社会に入っていけない自己に対するフラストレーション、それらをどこに吐き出したらよいのかと葛藤している若者が大勢います。

今回の暴動で、移民に寛容と思われてきたスウェーデンでも、根底ではメディアが報じない、または報じたがらないひずみが生じているという現実が明らかになりました。

政治家は、外国人の多い地区における学校環境の整備、ティーンエイジャーとしてスウェーデンに移り住んだ若者へのスウェーデン語支援の充実、中学や高校の卒業資格習得率の向上、外国人の就業率アップを目標に掲げています。また、都市の機能を郊外に拡散する、企業が郊外に移転した場合に減税するといった意見も出されています。しかし、それで問題は解決するのでしょうか。

一方、東南アジアでもミャンマーから船で脱出した少数民族のロヒンギャ族の女性や子供が、難民船で隣国のタイやマレーシア、インドネシアでも受け入れを拒否されて、食糧援助もないまま海上でさまよっている悲惨な報道を目にします。ミャンマー政府も国内の少数派ロヒンギャ族については、国籍も与えず一定地域に隔離するなど彼らを人として扱っていない非道さにはあきれますが、仏教徒との対立は激しく政府もロヒンギャ族に対する支援を打ち出すことが難しいのかもしれません。しかし、人権派で国民にも人気が高く、政治的発信力が強いアウンサンスーチー女史がこのロヒンギャ族の保護について、何も発言しないのは不思議です。

難民船が、海上を彷徨う ロヒンギャ族の難民(1) ロヒンギャ族の難民(2)

話は、変わりますが最近、日本への外国人観光客が近隣諸国に対する日本政府のビザ発給条件を緩和したことにより、ものすごい勢いで外国人観光客が増加して、旅行客が買い物や観光・宿泊で落とすお金も莫大な金額となり、地元のサービス産業には大きく貢献しています。

しかし、その一方で景気回復による人手不足が深刻化して、外国から研修名目で一時的に多くの外国人労働者を農業・漁業・建築現場など日本国内に受け入れをしていますが、間違いなく就労契約期間が過ぎれば外国人労働者が自国に戻って行くと言う保証は無く、一度日本の快適な生活環境になれてしまえば、自国に帰国することなく、そのまま不法滞在してしまう可能性も高くなります。

当然、そうした外国人が日本に定住した場合には、不法滞在の外国人の間で生まれた子供には、生活に必要な義務教育を受けさせる機会がなくなり、そのまま放置すれば無教育の外国人が多くなって、将来的にはこうした外国人の子ども達が教育も受けられず、就職もできない状態が続けば、不満分子として、国内で事件や騒動を起こすこともあり得ると思います。

こうした、無秩序な外国人の受け入れ政策は、かえって国内を不安定化させることにつながり、政府のしっかりとした外国人受け入れ方針を定めるべきだろうと思います。確かに我が国は外国に比べて、政治的難民の受け入れ制限が厳しく、難民として何年も日本で生活しているにも係わらず、なかなか定住許可を出さない日本政府の方針は合理性を欠けるところがあります。日本の将来の人口減の傾向はすぐには改善されないでしょうから、外国人受け入れに対し国のルールに従って一定枠の移民の受け入れと、それら外国人に対する日本で生活をしていく上で必要な教育や技能向上の教育も外国人向けの支援策が必要であると思います。

我が国もオーストラリアの様な移民受け入れの条件を、点数制で評価して、単純労働者の増加を抑え、我が国の発展に寄与できる技能者や高学歴者の受け入れ条件を緩和して、社会も外国人と共生する中で両者が上手く、互いの良い所を生かした日本社会をこれから作っていく方向に舵を切る時に来たのではないかと思いました。

レポート:S.K